道場スピリット マネージャー・北原希代子 作
#26遠回りなら、また格別

「親父さんには、自分が目指す目的地が見えているんでしょうね。だから、近道でも遠回りでも、そこに辿り着ければどちらでもよい。」
これは、道場事務所のホームページを担当して下さっているゴファの遠藤さんの言葉です。
二〇一四年五月、前菜、御椀、煮物、焼物と献立替えの撮影が順調に進んでいく中、今月のお造りは「おこぜ」を楽しんでもらうのがテーマ。課題は、この時季青森から入って来る殻付き雲丹とともに、どのように盛り付けるかだ。おこぜも殻付き雲丹もメインを張れる立派な看板役者だ。大鉢に氷を張って雲丹を置き、おこぜの薄造りに肝や皮など盛り付けて菖蒲の葉をあしらってみたが、いまひとつ納得いかないのか、麦の穂にあしらいを変えてみた。
「よし、これで行こう」と言いながらも、まだ、何やら気になっている様子。次の料理に取り掛かっても、何やら目的地にたどり着けないもどかしさに支配されながら、揺るがない自分のイメージに向けて、考えを巡らせていく。
一通り料理を作りおえて全体を眺めている時だった。「あ、そうだ。一緒に盛るから複雑になっちゃって……、別々に盛ったほうが……」と言いながら、その瞬間には、もう器を探しに歩き出していた。「ああ、よかった」「迷って迷って!」と、独り言を言いながら、遠回りした分だけ、実に嬉しそうだ。
角盆の右手前に殻付き雲丹、おこぜの薄造りは左奥でぽん酢はその右手。おもてなし、作法、食べ易さ、想い……すべてがデザインされた今月の御造りが完成された。

 

おもてなし・作法・食べ易さ・想い

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