道場スピリット マネージャー・北原希代子 作
#21お客様を入れるためには何でもした若い時代。お客様の立場に立って考える。

共同経営で始めた「新とんぼ」の頃から、同伴で使ってくれるホステスさんの為に、店のお客さんを連れて飲みにいったり、誕生日に花を贈ったりと、道場は営業にも力を入れていた。ろくさん亭を始めた昭和四十六年頃は、キャバレーも華やかでホステスが恋人を変えるごとに引越しをするので、休みの日など引越しの手伝いでおお忙しだったと言う。今と違って気軽に引っ越し屋を頼める時代ではなかったので、ホステスさん達はとても喜んでくれ、店が終わった後など、お客さんを連れてよく足を運んでくれた。
店が立て込んでくると、補助席を作ったり、エレベーター前で待つお客さんにひれ酒を振る舞ったり、それでも入れないと向かいの千疋屋で待って貰ったりもした。勿論御茶代はこちら持ちである。そうしてでも、来てくれるお客さんは帰したくなかった。店は、深夜もやっていた。お客さんの来るうちはできるだけ開けておきたいと考えていたようだ。食事が終わった頃には店の隅にエレクトーンを置いて、唄えるようにもした。まだカラオケなど無かった時代、いわゆるレストランバーである。
会社の落成式や周年パーティーなど出張料理もよく引き受けたという。他所でケータリングもあることはあったが、出張経費等が加算されて高くつき、お店の値段ぐらいでと考えていた道場の出張料理は重宝されたらしい。
道場の体の中には、いつもお客さんが同居している。自分が客だったらどうしたいか、どんなふうにして貰いたいか、体の中のお客様コンピューターがいつでも答えを弾き出して、それを素直に実行して来た。
八十七歳になった道場の経営は、あの頃と何も変わっていない。
道場の体の中のお客様は、いまだに健在である。

 

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