道場スピリット マネージャー・北原希代子 作
#20鴨居と障子の関係

道場が料理人を志して山中を出る時、母親は末の息子を気遣って「六ちゃん、人に可愛がってもらえるようにせないかんよ」と言葉を掛けてくれたそうです。人に可愛がられることが、何よりも仕事の第一歩だと。道場はこの言葉を肝に銘じ、生きてきました。
土地柄もあり、両親は浄土真宗の信仰に篤く、家族が集まる食事の後など、礼儀作法や人としての生き方など子どもたちに優しく説いて聞かせました。週に一度は近くの灯明寺というお寺で講話を聴く会が開かれ、近隣の子どもたちが集められた。子どもたちに取っては、和尚さんのお話の後のご馳走が目当てだったが、こうした地域ぐるみの情操教育が家庭での子どもたちにしっかりと根付いていた時代だった。
子どもの頃から道場はマメで気の利く子どもだったが、頑固で親分肌のところがあり、母はそれが心配だった。「何も分からないうちは我を出してはいけないよ。鴨居と障子はうまく組み合わさってスムーズに開け閉めができる。それが合わなくなれば、障子の枠を削る。上の鴨居を削る人はいない。だから鴨居はお店のご主人で、六ちゃんが障子だ。我を削っていくのが道理というもんだよ」
「神仏はどこに居たって見ているからね、手を抜いたり陰日向があってはいけない。どんな時も一所懸命やらなきゃいけないよ」母は、繰り返し道場を諭した。
父親からは、「石の上にも三年。いったん出て行ったら、石にかじりついてでも我慢しろ。決して音を上げるなよ」と言われ、後の修行の中で何度も心折れそうな辛い時も、これは神様が与えてくれた試練だと、逃げずに頑張り通した。
こうした、両親の教えの一つ一つが道場の中で今もしっかりと生きている。
出しゃばりで生意気な私に、何度も何度も聞かせて窘めてくれた「鴨居と障子」の話。
私はまだまだ身にしみていないようだ。

 

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