道場スピリット マネージャー・北原希代子 作
#15苦境に立たされる度に、新しい料理が生まれる

銀座の女性たちを虜にした、ろくさん亭の人気料理「肝ぽん」は、弱冠二十八歳で料理長を任された「赤坂常磐家」の時代に誕生した。当時の赤坂常磐家は、毎夜黒塗りの車が列をなす、料亭政治の中心だった。各地の陳情客とともに大勢の政治家たちが訪れ、調理場はいつでも目の回るような忙しさ。その日も六十人前の河豚をひき一息つくと、すぐにおかわりの注文がきた。仕事の早さには自信はあったが、道場もこれには困り果て、追い詰められて思い付いた料理が、白菜と河豚をポン酢であえた肝ぽんだった。そばにあった鮟肝も刻んで加え、この料理は大うけしたと言う。
その斬新なアイデアと客を待たせたくないと言う気配りが生んだ逸品は、ろくさん亭を開いてからも、和食で生野菜を使う認識がなかった時代に銀座の女性たちに大いに受けた。
苦境に立たされる度に、新しい料理が生まれる。この料理は、道場を一躍有名にしたテレビ番組「料理の鉄人」でもフォアグラ対決で姿を変えて蘇った。和食では殆ど使うことのなかったフォアグラを鮟肝に見立て、道場は「料理の鉄人」の初戦を勝利した。

 

肝ぽん

これまでの記事
↑トップへ戻る