道場スピリット マネージャー・北原希代子 作
#13旨色こそが、最高の美味しさ

道場は、ときどき辞書には載っていないが的確で美しい言葉(造語)を作りだすことがある。
「旨色」うまいろも、その一つだ。
石川県の郷土料理「茄子のオランダ煮」は、店でも度々献立に上るファンの多い料理だが、色鮮やかに仕上げようとするがあまり、味がのって居なかったり食感が悪かったりと、料理の本質を問われる料理でもある。若い頃は自分もそうだったと自戒しながら、弟子たちにはいつも「色に走るなよ」「食感を大事にしろよ」と、道場は機会を見つけては言っている。特に料理の撮影だったり、取材があったりするとどうしても綺麗な料理を作ろうとしてしまうが、こうした見せようとする料理では味は伝わらないのだと。
料理に限らず、どんな世界にも旨色は存在する。親子の関係でも、師弟の関係でも、友人関係でも、上辺の建前を取り払ったところにこそ、お互いの本質と向き合う、旨色の境地があるのだと。そして、その境地こそ道場が踏み入れた旨色の世界ではないだろうか。
美味しい味をたっぷりと含んだ茄子の微かな照りを持った旨色、決して鮮やかではないけれど、このいぶし銀のような旨色こそ、思わず唾を飲みこむような最高の仕上がりだと道場は云います。
中央公論社から二十五年前に出された「おかず指南」の中に、この茄子のオランダ煮が載っていたのでそのまま転載させて頂きました。

茄子オランダ煮「オランダ煮はいったん油で揚げてから濃い味のだしで煮る」
このように油で揚げてから煮たものをオランダ煮と言います。揚げたあとで熱湯をかけて油抜きしますが、茄子に穴をあけて油の旨さを残していますから、重厚感のある味に仕上がります。煮て、また一晩おくと、油と煮汁がしっとりと交わって、「ひと晩」という時間の味がします。
最初に、油の中で皮が破れないように針で細かく穴をあけます。店でたくさん作るときには剣山に軽く転がしてやります。即刻、穴があきます。みょうばん水につけると、色が冴えますが、なければないでかまいません。これを油で揚げます。細かな針の穴があいていますから、油がしみ込みます。てんぷらにするわけではないので、中温の油でじっくり揚げます。揚げたら熱湯をかけて油抜きします。手間をかけて揚げたものの油を、わざわざ洗い流すのはもったいないようですが、油は風味だけ残っていればよいので、これでいいんです。
あとは煮るだけです。追いがつおをして、落し蓋をして、ことこと煮ます。茄子にだしがしみ込んで、箸ではさんだだけで、じゅうっと汁がしみだします。

おろし生姜で召し上がって下さい。
材料 茄子・揚げ油・だし(蕎麦だし7基本だし3)・昆布、鷹の爪・削りがつお

この本が出版された頃には、まだ「旨色」と言う言葉は誕生していませんでしたが、じっくり味のしみた、茄子のオランダ煮の旨色が見えるようです。

 

旨色

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