道場スピリット マネージャー・北原希代子 作
#6謙虚と好奇心

道場は、誰に対しても決して偉ぶったり威張ったりしない。礼儀をわきまえない人間は嫌いだが、自分の知らない事を教えてくれる人間はすべて師だと思っている。例え、それが弟子であっても同じだ。人間の好き嫌いはあるが、決して頭から食わず嫌いはしない。以前、雑誌「プレイボーイ」の企画で「泉谷しげるさんの後輩ロッカーたちとの対談」を、と云う企画が舞い込んできた。さすがにロックはダメだろうと、半信半疑でお伺いを立てると「面白いじゃないか」と快諾、びっくりしたことがある。対談は終始和やかに進んで、若者たちの率直な話を楽しそうに聞きながら、素直に意見を交わしていた。
テレビ朝日の「裸の少年」でも、沢山のジャニーズジュニアの子たちを相手に、真顔で人生を語っていた。相手が誰であろうといいかげんな受け答えをしないのは、これまでの人生を真摯に生きてきた証なのかも知れない。番組を通していくつもの店を回っては、好いところを見つけて褒めた。街場のこうした店でもこんなに一生懸命やっているんだから、うちだってオチオチしていられないぞ。と、常に自分を戒め、同時に「この店がなぜ皆に受けるのか」世の中の流れがどこに向いているのか、絶えずアンテナを尖らせていた。
「世の中、上には上がある」道場がよく弟子たちに言う言葉だ。「今いる世界が全てだと思うなよ。もっともっとすごい世界はいくらでもある。それより、自分の中でこれ以上は出来ない、これが最高だと自信を持って言えるような仕事をしろ」と。
「料理の鉄人」以後、道場は他のジャンルの料理人と好んで交流を持った。同じ食材でも、ジャンルに寄ってその使い方も調理方法も違う。食材を戻すのにも、水で戻す方法、酒で戻す方法、油で戻す方法など、様々な方法がある。もともと概念を外すことをモットーにしている道場に取って、こうした異ジャンルでの調理方法は目を見張るものばかりだった。こうして、道場は誰にでも教えを請い料理の幅を拡げて行った。中でも、周富徳さんは新しい食材を見つけるとよく店まで届けてくれ、お互いのアイデアを語り合った気の置けない仲間だった。

★「裸の少年」で回った店は、七年間で約160軒余り。一日四~五軒の店を回り店の名物料理を味わう。評判の料理ばかりなので、道場は必ず好いところを見つけて褒めたが、実は本当に旨い時だけ「北原、旨いぞ!」と、言って、私に味見をさせてくれた。

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